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【作品解説】アンリ・マティス「午後遅くにノートルダムを垣間見る」

午後遅くにノートルダムを垣間見る / Notre-Dame, une fin d'après-midi

暗黒時代のマティス作品


アンリ・マティス『午後遅くにノートルダムを垣間見る』(1902年)
アンリ・マティス『午後遅くにノートルダムを垣間見る』(1902年)

概要


作者 アンリ・マティス
制作年 1902年
サイズ 72.5 cm × 54.5 cm
メディウム キャンバスに油彩
所蔵先 オルブライト・ノックス美術館

『午後遅くにノートルダムを垣間見る』は、1902年にアンリ・マティスによって制作された油彩作品。暗い色合いが特徴的だが、1901年末から1903年末までは、マティスにとって個人的に憂鬱な時期で、マティスの暗黒時代と呼ばれている。

 

1902年5月、「ハンバート事件」と呼ばれる大きなスキャンダルが発生し、マティスの妻であるアメリの家族は思わぬ形で巻き込まれる。アメリの母(ハンバート家の家政婦)と父は、このスキャンダルのスケープゴートとなり、その結果、マティスは翌年から弁護士やジャーナリストとの対応に追われ、アトリエは警察捜査され、妻の家族は詐欺被害者で怒れる群衆に脅かされた。

 

美術史家のヒラリー・スパーリングによれば、「世間に知られ、義父が逮捕されたことで、マティスは7人の大家族を支える唯一の稼ぎ手となった」。そのため、彼は少なくとも商業的な絵画を描かざるを得なくなったという。

 

ロダンやバリイに影響を受けたマティスは、絵画だけでなく彫刻でもボリューム感を出すことに苦心した。マティスはパレットを暗くし、その結果、本作品や《カルメリーナ》(1903年、ボストン美術館所蔵)などに見られるような作品になった。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Notre-Dame,_une_fin_d%27apr%C3%A8s-midi、2023年4月4日アクセス