高階秀爾「近代絵画史」(上)
・20世紀の絵画の歴史が不遇の「反逆者」たちを出発点として形作られてきたことは周知のとおりである。とすれば、印象派の画家たちを中心として、19世紀の後半に一連の「独立派」の系譜が存在したということができよう。そしておそらくその点に「近代」絵画の大きな特質があるのである。
・独立系といっても近代における独立系はかなりバラバラである。近代以前は、バロック様式やヴェネツィア様式など独立といっても統一的な様式が存在した。
・しかし、近代絵画は統一的な様式が成立しえなくなったところに本質がある。どれが本当の素顔かと探し求めるよりも、いくつもの顔を持っているというところに近代絵画の正体を見極めなければならない。
・その理由は、芸術家たちが、形式上の統一性よりも、自己の個性と、内面性と、主観性とを追求するようになったらである。
・もし、それが正しければ、近代絵画の出発点を、一般的に語られる印象派よりも前の、少なくともクールベやマネ、さらにもう一世代前のロマン派の時代にまでさかのぼる必要がある。個性の追求といい、内面性、主観性の表現というのは、まずロマン派の画家たちが求めたものだからである。
・ロマン主義とは、ヴィクトル・ユゴーは「遅れてきたフランス革命」だと言った。これがロマン主義の本質である。ユゴーをはじめとするロマン派の芸術家たちは、高貴なジャンルと卑俗なジャンルというような美のヒエラルキーを否定し、堅苦しい規則に制約されない自由な創造活動を主張した。
・ロマン主義:フランシスコ・デ・ゴヤ、ウィリアム・ターナー、ウジェーヌ・ドラクロワ
・写実主義:ギュスターヴ・クールベ、カミーユ・コロー、ジャン=フランソワ・ミレー
・印象派:フレデリック・バジール、ギュスターヴ・カイユボット、メアリー・カサット、エドガー・ドガ、アルマン・ギヨマン、エドゥアール・マネ、クロード・モネ、ベルト・モリゾ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロ、アルフレッド・シスレー
・後期印象派:ジョルジュ・スーラ、ポール・ゴーギャン、ポール・セザンヌ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、トゥールーズ・ロートレック、アンリ・ルソー
・ラファエル前派:ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、エドワード・バーン=ジョーンズ
・耽美主義・唯美主義:ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、エドワード・バーン=ジョーンズ、ウィリアム・モリス、ジェームズ・ホイッスラー、オーブリー・ビアズリー
・象徴主義:ギュスターヴ・モロー、オディロン・ルドン、エドヴァルド・ムンク、ジェームズ・ホイッスラー、ジェームズ・アンソール、アルノルト・ベックリン
・ナビ派:ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤール、フェリックス・ヴァロットン、モーリス・ドニ、ポール・セリュジエ
・アール・ヌーヴォー:オーブリー・ビアズリー、アルフォンス・ミュシャ、グスタフ・クリムト、アントニオ・ガウディ、オットー・ワーグナー、ウィーン工房、ヨーゼフ・ホフマン、アドルフ・ロース、コロマン・モーザー
・新印象派:ジョルジュ・スーラ、ポール・シニャック、アンリ・エドモンド・クロス
・初期近代彫刻家:アリスティド・マイヨール、オーギュスト・ロダン
・画商:デュラン・デュエル
・抽象芸術:フランシス・ピカビア、フランティセック・クプカ、ロベルト・ドローネー、レオポルド・シュルヴァージュ、ピエト・モンドリアン
・フォーヴィスム:アンドレ・ドラン、アンリ・マティス、モーリス・ド・ヴラマンク、ジョルジュ・ブラック
・表現主義:ブリュッケ、青騎士、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー、ワシリー・カンディンスキー、フランツ・マルク、エゴン・シーレ、オスカー・ココシュカ、エミール・ノルデ、アクセル・トーンマン、カール・シュミット=ロットルフ、マックス・ペヒシュタイン
・未来主義:ジャコモ・バッラ、ウンベルト・ボッチョーニ、カルロ・カッラ、ジーノ・セヴェリーニ、ナターリヤ・ゴンチャローワ、ミハイル・ラリオーノフ
・キュビスム:パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、ジャン・メッツァンジェ、アルベール・グレーズ、フェルナンド・レジェ、ロベルト・ドローネー、アンリ・ル・フォコニエ、マルセル・デュシャン、ジャック・ヴィヨン、フランシス・ピカビア、フアン・グリス
・彫刻:パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、コンスタンティン・ブランクーシ、ジョゼフ・クサキー、アレクサンダー・アーキペンコ、レイモンド・デュシャン・ヴィヨン、ジャック・リプシッツ、オシップ・ザッキン
・オルフィスム:ロベルト・ドローネー、ソニア・ドローネー、フランティセック・クプカ
・写真:ピクトリアリスム、ストレートフォトグラフィ、アルフレッド・スティーグリッツ
・シュープレマティスム:カシミール・マレーヴィチ、アレクサンドル・ロトチェンコ、エル・リシツキー
・シンクロミズム:スタントン・マクドナルド=ライト、モーガン・ラッセル
・ヴォーティシズム:パーシー・ウインダム・ルイス
・ダダイスム:ジャン・アルプ、マルセル・デュシャン、マックス・エルンスト、フランシス・ピカビア、クルト・シュヴィッタース
・形而上絵画:ジョルジョ・デ・キリコ、カルロ・カッラ、ジョルジョ・モランディ
・デ・ステイル:テオ・ファン・ドゥースブルフ、ピエト・モンドリアン
・表現主義:エゴン・シーレ、アメディオ・モディリアーニ、シャイム・スーティン
・新即物主義:マックス・ベックマン、オットー・ディクス、ジョージ・グロス
・フィギュラティブ・アート:アンリ・マティス、ピエール・ボナール
・アメリカ近代美術:スチュアート・デイヴィス、アーサー・ダヴ、マーズデン・ハートレイ、ジョージ・オキーフ
・構成主義:ナウム・ガボ、グスタフ・クルーツィス、モホリ=ナジ・ラースロー、エル・リシツキー、カシミール・マレーヴィチ、アレクサンドル・ロトチェンコ、ヴァディン・メラー、ウラジーミル・タトリン
・シュルレアリスム:ルネ・マグリット、サルバドール・ダリ、マックス・エルンスト、ジョルジョ・デ・キリコ、アンドレ・マッソン、ジョアン・ミロ、フリーダ・カーロ
・バウハウス:ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、ヨゼフ・アルバース
・彫刻:アレクサンダー・カルダー、アルベルト・ジャコメッティ、ヘンリ・ムーア、パブロ・ピカソ、ガストン・ラシェーズ、フリオ・ゴンサレス
・スコティッシュ・カラリスト:フランシス・カデル、サミュエル・ピプロー、レスリー・ハンター、ジョン・ダンカン・ファーガソン
・シュプレマティスム:カシミール・マレーヴィチ、アレクサンドラ・エクスター、オルガ・ローザノワ、ナジデダ・ユーダルツォーヴァ、イワン・クリウン、リュボーフィ・ポポーワ、ニコライ・スーチン、ニーナ・ゲンケ・メラー、イワン・プーニ、クセニア・ボーガスラヴスカイヤ
・プレシジョニズム:チャールズ・シーラー、ジョージ・オールト
・具象絵画:フランシス・ベーコン、ルシアン・フロイド、ベルナール・ビュフェ、ジャン・カルズー、モーリス・ボイテル、ダニエル・デュ・ジャナランド、クロード・マックス・ロシュ
・彫刻:ヘンリ・ムーア、デビッド・スミス、トニー・スミス、アレクサンダー・カルダー、イサム・ノグチ、アルベルト・ジャコメッティ、アンソニー・カロ、ジャン・デュビュッフェ、イサック・ウィトキン、ルネ・イシュー、マリノ・マリーニ、ルイーズ・ネヴェルソン、アルバート・ブラーナ
・抽象表現主義:ウィレム・デ・クーニング、ジャクソン・ポロック、ハンス・ホフマン、フランツ・クライン、ロバート・マザーウェル、クリフォード・スティル、リー・クラスナー、ジョアン・ミッチェル、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマン
・アメリカ抽象芸術:イリヤ・ボロトフスキー、イブラム・ラッサウ、アド・ラインハルト、ヨゼフ・アルバース、バーゴインディラー
・アール・ブリュット:アドルフ・ヴェルフリ、オーガスト・ナッターラ、フェルディナン・シュヴァル、マッジ・ギル、ポール・サルヴァドール・ゴールデングリーン、ヘンリー・ダーガー
・ネオ・ダダ:草間彌生、キャロリー・シュリーマン、オノ・ヨーコ
・ポップアート:アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ジャン・ミシェル・バスキア
・パフォーマンス:マリーナ・アブラモヴィッチ
・芸術写真:杉本博司、ダイアン・アーバス、荒木経惟、シンディ・シャーマン、植田正治、ジョエル・ピーター・ウィトキン、ヴィヴィアン・マイヤー、トーマス・ルフ、フランチェスカ・ウッドマン、ヘルムート・ニュートン、細江英公、ロジャー・バレン、サリー・マン、岡上淑子
・前衛映画:スタンリー・キューブリック、アレハンドロ・ホドロフスキー、デヴィッド・リンチ、ヴェラ・ヒティロヴァ、ヤロミル・イレシュ、ヤン・シュヴァンクマイエル、ギャスパー・ノエ、ジョン・ウォーターズ、寺山修司、アンディ・ウォーホル、
・人形:四谷シモン
※21世紀前後は制作途中。
・ストリート・アート:バンクシー、ロバート・デル・ナジャ、ニック・ウォーカー、インキー、ミスター・ブレインウォッシュ、KAWS、シェパード・フェアリー、インベーダー、ブラック・ル・ラット、ミス・ヴァン、C215
・ポップシュルレアリスム:マーク・ライデン、ロバート・ウィリアムス、オードリー川崎、高松和樹、ゲーリー・ベイスマン、カミュ=ローズ・ガルシア、アナ・バガヤン
・写真:アレックス・プラガー
・パフォーマンス:ミロ・モアレ
・イラストレーション:天野喜孝、猫将軍、ヒグチユウコ、真珠子
・画家:大友昇平、加藤泉、近藤聡乃、川島優、川島秀明、富川光義、篠原愛、長井朋子、山本タカト、山田彩加、薄久保香、谷口ナツコ