【美術解説】フランセーズ・ターナー「熟女の裸体」

フランセーズ・ターナー (1965年3月22日-2003年7月17日)は、ドイツの女性画家。“永遠の若さ”という人類最大のバカバカしい価値観にとらわれて、美術の世界では存在することを許されなかった「熟女の裸体」。彼女は20代の時点から自らの自画像として熟女の裸体画を発表し続けた。

 

暗黒舞踏家のように手足の指や肩をねじり、ひねり、顔の筋肉をさまざまに歪める裸の熟女。一度熟した後にしなびた乳房の先を指でひっぱっている熟女。フランシス・ベーコンに影響を受けているである空間や色彩を使って、熟女の裸体というボディーツをぴっちり着込んだ作者自身そこにいる。

 

若さだけが美ではない。手足のない不自由な肉体を持つ老人の肖像画をひたすら描き続けることで、既成の美術界における価値観をぶち壊そうとする老人性アーティストFrances Turner。表現するに値しないものこそ、表現する価値があるという彼女のアートコンセプトこと本物のアートではないだろうか。

 

だが、若いときから描いてきた熟女像にようやく実際に追いつき始めようとした38才のときに(2003年6月)、運命であるかのように突然の脳出血で作者は急逝した。