【作品解説】ウンベルト・ボッチョーニ「空間における連続性の唯一の形態」

空間における連続性の唯一の形態 / Unique Forms of Continuity in Space

動きやダイナミズムを表現した歴史的彫刻


ニューヨーク近代美術館所蔵の「空間における連続性の唯一の形態」
ニューヨーク近代美術館所蔵の「空間における連続性の唯一の形態」

概要


作者 ウンベルト・ボッチョーニ
制作年 1913年(オリジナル)、以後
メディウム 石膏(オリジナル)、ブロンズ(複製)
サイズ 1.11 m x 88 cm
コレクション サン・パウロ美術館、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館など。

「空間における連続性の唯一の形態」は、1913年にウンベルト・ボッチョーニによって制作された彫刻作品。1.11 m x 88 cm。ボッチョーニ死後も数体作られている。オリジナルは石膏作品でブラジルのサン・パウロ美術館が所蔵している。本作品は、ボッチョー二が関わっていた前衛運動「未来派」と関わりのある作品で、動きやダイナミズムを表現している。

 

ボッチョー二はこれまで画家として活動してきたが、1912年から彫刻作品の制作を始める。「私は今彫刻制作に夢中だ!ミイラ化した芸術の完璧な修築を垣間見ることになるだろう」と宣言、これまでの彫刻作品を批判する目的で新しい彫刻制作に挑戦した。こうして翌年の1913年に完成させたのが本作である。

 

ボッチョー二の制作意図は「分析的な不連続性」の代わりとなる動作となる「合成した連続性」を表現することだった。これはフランティセック・クプカやマルセル・デュシャンとその哲学は似ていた。腕はなく、顔もあまり認識できない。人体のフォルムはもともとサッカー選手の動きから影響を受けており、風と速度を受けて変形して見える人体のように見える。

 

また、ボッチョーニの未来主義は「機械主義」としても知られる。そのため、本作は空気力学や流体力学の要素を備えており、その滑らかな輪郭は空気抵抗を小さくする流線型の機械を暗示する。ボッチョーニおよび未来派は、モダニズムにおける技術競争がイタリアの古典への執着を粉砕すると信じた。

 

しかし、翌年の1914年に第一次世界大戦が勃発。ボッチョーニは戦争に参加し、1916年8月16日、騎兵隊訓練中に落馬して馬に踏みつけられ、その翌日に33歳で死亡した。

 

よく見られるのはブロンズ像であるが、ボッチョーニが生存中には一体もブロンズ像は制作していない。1931年に2体のブロンズ像が作られ、1体はニューヨーク近代美術館が所蔵している。1949年に2体が作られ1体はメトロポリタン美術館が、1体はとミランのノヴェチェント美術館が所蔵している。ほかに1972年以降にも複製が数体つくらており、テイト・モダンやクレラー・ミュラー美術館などにもある。

 

また、イタリアの20セントユーロ硬貨の表側に「空間における連続性の唯一の形態」が描かれている。