【美術解説】ピクトリアリスム「ソフトフォーカスで撮影された芸術写真」

ピクトリアリスム / Pictorialism

ソフトフォーカスで撮影された芸術写真


ジョージ・ヘンリー・シーリー《ブラック・ボウル》(907年)
ジョージ・ヘンリー・シーリー《ブラック・ボウル》(907年)

概要


ピクトリアリスムは、19世紀後半から20世紀初頭に発生した写真分野における芸術運動である。明確な定義は存在していないが、広義ではイメージを単純に記録した写真ではなく、イメージを創造するための手段として撮影された写真全般のことを指す。狭義では、わざと写真を不鮮明でぼやけるようソフトフォーカスで撮影された芸術写真である。

 

ピクトリアリストたちにとって写真とは、絵画やドローイングと同じくもので、鑑賞者に撮影者の自己の感情を伝える手段の1つだった。

 

ピクトリアリスム運動は、1940年代後半まで続いたが、最盛期は1885年から1915年。単純な現実の記録に過ぎないという考えに反発したのをきっかけに、純粋な自己表現手段として写真を発展させる国際的な芸術運動に変化していった。おもに、イギリスとアメリカを中心にピクトリアリスム運動は発展した。

 

ピクトリアリスム運動の開始から約30年以上にわたって、画家や写真家や批評家たちは元来の芸術規則に反発する形で議論を重ねていき、最終的にはアルフレッド・スティーグリッツをはじめ、何人かの写真家の作品が美術館に収蔵されるまでに至った。

 

ピクトリアリスム運動は1920年以降に徐々に勢いを失いはじめたが、第二次世界大戦の終わりまではそれなりに人気がった。この期間にモダニズム写真の新しいスタイルが流行しはじめ、人々の関心はソフトフォーカスなピクトリアリスムより、シャープで鮮明なストレート写真へ興味が移り始めた。

 

また、何人かの重要な20世紀の写真家たちも、初期はピクトリアリスム形式で活動を始めたが、1930年代までにストレート写真へ転向している。


 

■参考文献

Pictorialism - Wikipedia