【作品解説】バルテュス「朱色の肌と日本の女」

朱色の肌と日本の女/ Japonaise à la table rouge

節子夫人をモデルとした鏡像的な絵画


※1:バルテュス《朱色の肌と日本の女》1967-1976年
※1:バルテュス《朱色の肌と日本の女》1967-1976年

概要


作者 バルテュス
制作年 1967-1976年
メディア 油彩
サイズ 145 cm × 192 cm
所蔵者 ブレント・R・ハリスコレクション

《朱色の机と日本の女》は、1967年から1976年にかけてバルテュスによって制作された油彩作品。145cm×192cm。ブレント・R・ハリスコレクション所蔵。

 

モデルは節子夫人で、日本風の室内の中で、鉢巻を締めた節子夫人が、姿見の前に膝をついてのぞき込んでいる。着物は右肩を残してはだけ、帯でかろうじてとまっている。

 

身体は引き伸ばされて様式化され、角張った左肩が幾何学的な印象さえ与える。このバルテュス独特の角張った表現は、初期の『嵐が丘』の挿絵のキャシーまでさかのぼるバルテュス独特の「型」の1つで、その後《トランプ》シリーズなどで何度も描かれてきた。

※2:バルテュス《トランプの勝負》(1948-1950年)
※2:バルテュス《トランプの勝負》(1948-1950年)

《黒い鏡を見る日本の女》と対の作品

本作品は、《黒い鏡を見る日本の女》とは朱と黒の対作品になっている。バルテュスは「鏡を使うと自分の絵を左右対称に、いわば新鮮な目で見られる」と語っていたが、この対作品にはバルテュスの「鏡」に対する気持ちが込められている

 

※3:バルテュス《黒い鏡を見る日本の女》(1967-1976年)
※3:バルテュス《黒い鏡を見る日本の女》(1967-1976年)
※4:バルテュスと節子夫人
※4:バルテュスと節子夫人

日本画の影響が色濃く見られる


日本画の影響が強く、ほとんど陰影のない平面的な人物表現だけでなく、敷物や朱色の机に見られる逆遠近法(画面の奥に向かう線を末広がりにする描き方)にも、日本美術の影響が見られる。

 

なお、本作の習作には「浮世絵」という漢字が描かれているが、これがバルテュスの蔵書の『浮世絵全集』の表紙の題字を写したものだとされている。

※5:《朱色の机と日本の女》の習作
※5:《朱色の机と日本の女》の習作