日傘をさす女 / Woman with a Parasol
家族の日常風景を印象派スタイルで描く
世界的な画家であるクロード・モネの代表作として知られる『日傘をさす女性』を解説します。この作品は、モネの作風を代表するものの1つであり、美しい色彩と繊細な表現力で豊かな表現性を持っています。この記事では、『日傘をさす女性』をより深く理解するために、モネの作品の特徴やその背景について、詳しく解説していきます。また、この作品の見どころを紹介し、モネの作品への理解を深めていきます。
概要
作者 | クロード・モネ |
制作年 | 1875年 |
メディウム | 油彩、キャンバス |
サイズ | 100cm × 81cm |
コレクション | ナショナル・ギャラリー (ワシントン.DC) |
『日傘をさす女性』は、1871年から1877年までモネがパリ北西部のアルジャントゥイユで暮らしていた頃に制作されたものです。
風の強い夏の日、妻カミーユと息子ジャンが散歩している様子を描いています。サイズは100cm × 81cmと、1870年代に制作されたモネの作品の中で最も大きなものの一つです。この絵はモネの作品の中でも、また、印象派全体の中でも最も有名で評価の高い作品の一つです。
この絵は、印象派の特徴である光と色彩の美しい表現が際立っています。印象派は19世紀後半にフランスで生まれた美術運動で、何気ない屋外の場面にいる普通の人々の実物大の多人物像を描きたいという願望から生まれました。「印象派」という名称は、モネの作品《印象・日の出》が由来となっています。
最も純粋な印象派は風景画と調和しており、モネは風景画を好んだ。『日傘をさす女性 - モネ夫人と息子』では、人物画家としての彼の技量が同様に明らかです。
印象派の特徴として、外光の効果を重視し、屋外で制作する「戸外制作(プレナール)」や、筆致を明確に残すことで、瞬間の光や空気感を捉えることがあります。
家族の日常風景を印象派スタイルで描く
この作品は、家族の何気ない日常を描いた風俗画として制作されました。これまでのアカデミズムの形式的な肖像画ではありません。戸外で短時間で描かれたと考えられています。
画面には、散歩中に子どもと妻を後ろから呼び止め、振り返った瞬間が捉えられています。
モネの光の使い方と自由な筆遣いにより、キャンバスには色彩が躍動し、風や動きを感じさせます。モネ夫人のベールは風に吹かれ茶色く染まり、白いドレスは渦を巻くように描かれています。また、波立つ草の緑が日傘に映り込み、色彩の調和を生み出しています。
従来のアカデミックな肖像画とは異なり、モネは被写体を周囲の自然と一体化させるように自由に描き出しています。鑑賞者の視点は見上げるような構図で、モネ夫人は青空と浮かぶ白い雲を背にして立ち、画面に奥行きが加えられています。さらに、地面の盛り上がりの後ろに息子ジャンが描かれ、手前の彼女との対比が強調されています。
カミーユの背後からは明るい陽光が降り注ぎ、日傘や背中の布を輝かせ、野草の光が反射して彼女に温かみのある黄色い輝きを与えています。
この一瞬の何気ない日常のは、モネの鮮やかな色彩表現と軽快な筆致によって生命力あふれる印象を与え、鑑賞者に時を超えた感動を呼び起こします。
娘スザンヌをモデルにしたバージョンもある
本作は1876年4月にポール・デュラン=リュエル画廊で開催された「第二回印象派展」にモネが出品した18作品の中の1つである。
約10年後の1886年にモネは、二番目の妻の娘のスザンヌ・モネをモデルにして、これとよく似た草原で日傘をさす女性の絵画を2枚制作しており、それらはオルセー美術館に保存されている。。
1876年の展覧会でこの絵を見たジョン・シンガー・サージェントは、印象派展でこの作品からインスピレーションを受け、1889年に『フラッドベリでパラソルをさす二人の女』という作品を制作している。
来歴
モネはこの絵を1876年11月に医者のジョルジュ・ド・ベリオに売却した。かかりつけ医だったベリオは、定期的に絵が代金になっていた。
その後、ド・ベリオの娘ヴィクトリーヌとその夫アーネスト・ドノップ・ド・モンチーが相続し、パリのジョルジュ・メニエが購入する。1965年にポール・メロンとその妻バニー・メロンに売却された。
1983年にワシントンDCのナショナル・ギャラリーに寄贈された。
■参考文献
・https://www.nga.gov/collection/art-object-page.61379.html、2022年1月8日アクセス
・https://en.wikipedia.org/wiki/Woman_with_a_Parasol_%E2%80%93_Madame_Monet_and_Her_Son、2022年1月8日アクセス