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【作品解説】グスタフ・クリムト「希望Ⅱ」

希望Ⅱ/ Hope II

妊婦に焦点を当てたクリム作品


グスタフ・クリムト《希望Ⅱ》,1907-1908年
グスタフ・クリムト《希望Ⅱ》,1907-1908年

概要


作者 グスタフ・クリムト
制作年 1907年〜1908年
サイズ 110.5×110.5 cm
所蔵者 ニューヨーク現代美術館

《希望Ⅱ》は1907年から1908年にかけてグスタフ・クリムトによって制作されて油彩作品。クリムトが好んだモデルの1人であるヘルマを描いたもので、妊婦に焦点を当てたクリム作品の2作目である。

 

『ヴィジョン』と題された作品だが、先行する《希望》にちなんで《希望Ⅱ》と呼ばれるようになり、現在では《希望I》と区別されている。《希望Ⅱ》は1978年にニューヨーク近代美術館に収蔵された。

 

クリムトは1903年に《希望I》で、非常に身重なヘルマを描き、その時は裸で描かれていた。《希望Ⅱ》では、幾何学的な図形で装飾された長いドレスやマントを身に着けている。

 

茶色の長い髪に目を閉じ、むき出しの胸と膨らんだ腹部に向かって頭を下げている。服の前には、不釣り合いな人間の頭蓋骨が描かれている。おそらく労働の危険性を示すものか、あるいはメメント・モリ(《希望I》でも、彼女は頭蓋骨と死神らしき人物を伴っている)なのだろう。絵の足元では、3人の女性も祈るように、あるいは嘆くように頭を下げている。

 

110.5×110.5センチメートル(43.5×43.5インチ)の正方形の大きさである。

 

女性は絵の中央3分の1を占め、左右には金箔を施した濃い色の背景がある。女性の衣服は、ビザンチン美術品のように金箔で装飾され、豊かな色彩と模様が施されているが、正教会のイコンのように平坦で、繊細に描かれた人間の顔や輪郭、また背景の暗い色調と対照的である。

 

《希望Ⅱ》は、1908年の第1回ウィーン・クンストシャウに出品された。中心人物のヌードがスキャンダラスであったため、《希望I》は翌年の第2回ウィーン・クンストシャウまで展示されなかった。

 

この絵は1914年12月以前にウージェニー・プリマヴェーシが入手し、1930年代後半にオットー・カリールあるいはその後継者ヴィータ・キュンストラーのノイエギャラリーによって売却された。

 

その後、1978年にハンス・バルナスがニューヨーク近代美術館(MOMA)に売却するまで、個人コレクションに収められていた。



■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Hope_II、2023年1月5日アクセス