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【作品解説】エゴン・シーレ「ひまわり」

ひまわり/ Sunflowers

死を免れることができないひまわり


エゴン・シーレ《ひまわり》,1911年
エゴン・シーレ《ひまわり》,1911年

概要


作者 エゴン・シーレ
制作年 1911年
サイズ 20 x 15.8 cm
メディウム 紙に水彩
所蔵者 アルベルティ―ナ美術館

《ひまわり》は、1911年にエゴン・シーレによって制作された作品。アルベルティーナ美術館に所蔵されている。

 

シーレがひまわりをモチーフに選んだのは、ゴッホやクリムトの先例にならったものであることは間違いない。

 

ゴッホのひまわりは、20世紀初頭にウィーンで初めて展示されて以来、人気を博していた。1906年にミートケ画廊で開催されたゴッホ展の直後、クリムトはひまわりの絵を2点描き、いずれも1908年にウィーンで開催された大規模な「クンストシャウ」(美術展)で展示している。

 

シーレは元来、クリムトの描いたひまわりを確実に知っていたし、ゴッホのものに精通していたにもかかわらず、彼自身の解釈でひまわりを描いた。

 

ゴッホは花瓶に生けられた花を形式的に描くのに対し、クリムトのひまわりは、息苦しいほど密生した植物に囲まれた自然の中に描かれている。

 

シーレはクリムトのひまわりと同様に太い茎や葉をつけたままの自然な姿で描いている。しかし、若い画家の常として、背景は空白のままである。そのため、花々は、何の慰めもなく、それ自体で存在感を示している

 

3人の画家にとって、太陽とその地上の対応物であるひまわりは、生命力の具現化であった。しかし、太陽とは異なり、ひまわりは死を免れないものであり、シーレにとってひまわりは朽ち果てるという消えない刻印を帯びていた。

 

夏の終わり、最後に開花したひまわりは、死んで世界に種を残す。シーレのひまわりの花がその旬を過ぎていることは、暗い中心部と垂れた葉によって十分に表現されている