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【作品解説】フィンセント・ファン・ゴッホ「ファン・ゴッホの椅子」

ファン・ゴッホの椅子 / Van Gogh's Chair

黄色い家のゴッホの椅子


フィンセント・ファン・ゴッホ《ファン・ゴッホの椅子》,1988年
フィンセント・ファン・ゴッホ《ファン・ゴッホの椅子》,1988年

概要


作者 フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年 1888年
サイズ 93.0 cm × 73.5 cm
メディウム キャンバスに油彩
所蔵者 ロンドン国立美術館

《ファン・ゴッホの椅子》は、1888年にフィンセント・ファン・ゴッホによって制作された油彩作品。ロンドンの国立美術館が所蔵している。

 

タイル張りの床の上に、素朴な木製の椅子と、藁で編まれたシンプルな座面が描かれている。椅子の座面には、装飾されたパイプとパイプタバコの入ったポーチが置かれている。背景にはゴッホの名前が書かれた玉ねぎの箱がある。

 

ゴッホの作品カタログ制作者であるヤン・ハルスカーは、「後年に、これほど多くのことが書かれたゴッホの絵はほとんどない」と指摘したほど、ゴッホの代表的なイメージとなっている。

背景


1888年5月7日、ゴッホはオテル・カレルから南仏アルルのカフェ・ドゥ・ラ・ガレに移った。経営者のジョセフとマリー・ジヌー夫妻と親交を深めたのだ。

 

そして、近くにあるラマルティーヌ広場2番地にある「黄色い家」に入居する予定で、ゴッホは家具を揃えていた。本作品はそのころに描かれたものである。

 

ゴッホは自分の作品を展示するギャラリーを求め、一連の絵画を描き始め、最終的に『ゴッホの椅子』(1888年)、『アルルの寝室』(1888年)、『夜のカフェ』(1888年9月)、『ローヌの星空』(1888年)、『静物』などの作品を制作した。

 

ほかに有名な『12本のひまわりのある花瓶』(1888年)なども描かれたが、いずれも「黄色い家」の装飾のための絵画だった。

絵画解説


ゴッホの椅子」は、ゴッホが同じ画家のポール・ゴーギャンと過ごした波乱に満ちた時間から生み出された作品である。

 

この作品とペンダント作品の《ポール・ゴーギャンの肘掛け椅子》は、ゴッホが青とオレンジ、ゴーギャンが赤と緑の補色で描かれている。

 

この2枚の絵は、ゴッホが耳を切り落とす前に描かれたものだが、入院した後も改良が続けられた。

 

ゴッホの「椅子」とポール・ゴーギャンの「肘掛椅子」の対比から、この二枚の絵の象徴性について多くの分析がなされている。

 

ゴッホの椅子がシンプルで気取らないのに対し、ゴーギャンの椅子ははるかに豪華で華麗なものである。このことは、ゴッホとゴーギャンの激しい関係に照らして解釈されている。

 

ゴッホは「この2つの習作でも、他の習作と同様に、私自身は明るい色彩による光の効果を求めていた」と述べている。

《ポール・ゴーギャンの肘掛け椅子》,1888年
《ポール・ゴーギャンの肘掛け椅子》,1888年

■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Van_Gogh%27s_Chair、2022年6月12日アクセス