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【作品解説】ジャン=ミシェル・バスキア「無題(頭蓋骨)」

無題(頭蓋骨) / Untitled (Skull)

頭部の内と外の両方の次元を描写


ジャン=ミシェル・バスキア《無題(頭蓋骨)》(1981年)
ジャン=ミシェル・バスキア《無題(頭蓋骨)》(1981年)

概要


作者 ジャン=ミシェル・バスキア
制作年 1981年
メディウム キャンバスにアクリル、オイルスティック
ムーブメント 新表現主義
サイズ 205.74 cm × 175.9 cm

《無題》は、1981年にジャン=ミシェル・バスキアによって制作された絵画。

 

バスキアは1981年初頭に《無題》の制作を始める。短期間で完成しがちなバスキア作品とは異なり、本作は数ヶ月間かかっている。

 

美術史家のフレッド・ホフマン氏は、バスキアがスタジオで思い描いていたであろうビジョンを次のように説明している。

 

「完成が長引いた理由は、推測の域を出ないが、私や当時のディーラーであったアンニナ・ノセイをはじめとするバスキアに近い人たちは、この若い未熟な作家が作品の完成を躊躇したのは、この予期せぬイメージから発せられるパワーとエネルギーに不意を突かれ、恐ろしくなったからではないかと考えている」。

 

《無題》は、生と死の間に存在する頭部の内と外の両方の次元を描いている。目は、ロボトミー手術を受けたかのように、元気がない。控えめな表情は、内的活動の豊かさを示唆する鮮やかな色彩とは対照的である。頭蓋骨のようにおもわれがちだが、正確には頭部を描いている。

 

バスキア作品における頭部や頭蓋骨の表現は、黒人アメリカ人としての彼のアイデンティティに深く根ざしており、アフリカの仮面を連想させる。

 

バスキアは、表現力豊かでときに暴力的な筆致、言葉や記号、そのほかさまざまなな素材を組み合わせた独自のスタイルを確立し、社会問題に立ち向かった。

 

本作は、1982年にバスキアがAnnina Nosei Galleryアンニナ・ノセイ・ギャラリーで開催したアメリカでのデビュー個展で「無題」として発表された。

 

その数ヵ月後に購入された際、タイトルに「Skull」の文字が加えられ、それ以来、数々の展覧会「無題(頭蓋骨)」という名称で紹介されてきた。

 

ホフマンはタイトルが変更された理由について、「頭蓋骨が死を意味するという、より伝統的なメメント・モリの図像と作品を混同した結果」としている。

 

本作は1982年にエリ&エディス・ブロードが購入し、現在はロサンゼルスのブロード美術館に所蔵されている。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Untitled_(Skull)、2021年12月2日アクセス