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【作品解説】アンリ・マティス「赤いハーモニー」

赤いハーモニー / Harmony in Red (The Red Room)

フォーヴィスム時代の最高傑作


アンリ・マティス《赤いハーモニー》1908年
アンリ・マティス《赤いハーモニー》1908年

概要


作者 アンリ・マティス
制作年 1908年
メディウム カンヴァスに油彩
サイズ 180 cm×220 cm
コレクション エルミタージュ美術館

《赤いハーモニー》は、1908年にアンリ・マティスによって制作された油彩作品。180 cm×220 cm。現在はロシアのエルミタージュ美術館が所蔵している。1908年から1913年にかけてのフォーヴィスムの時期において最も完成度の高いとされているマティス作品で、別名「赤い部屋」呼ばれることもある。 

構図


本作は装飾性、絵画性、そして前衛性の3つの要素を持ちあわせている。

 

ねじれた青い蔓草模様とラズベリー・レッドの壁紙とテーブルクロスが、壁とテーブルの境を曖昧な状態にし、部屋本来の3次元空間を消失させ全体を1つのフラットな赤い空間にすることで、装飾性の高いキャンバスになっている。

 

しかし、窓から見える赤とは対照的な緑の庭、青い空、果物が入ったボールを動かそうとする女性などの存在が、鑑賞者の視線を移動させ、絵画的な奥行きを出している。さらに、赤、黒、青、オレンジ、紫という鮮やかで大胆なフォービスム的な色彩構成になっている。

 

描かれている風景は、パリにあったマティスのアトリエで、窓から見える景色は、スタジオの窓から見える修道院の庭である。またテーブルや果物のレイアウトをしているメイドは、色や構図を考えているマティス自身を表している。

最初は緑の部屋だったが最後に赤になった


《赤いハーモニー》は、ロシアの大コレクターのセルゲイ・シチューキンの依頼で制作した装飾パネルとして制作されたもので、セルゲイが住んでいたモスクワのマンションのダイニングルームに飾るためのものだった。

 

この絵画は3つの過程を経ている。はじめは赤ではなく緑の部屋だった。その後、シチューキンの要望で青色に塗りつぶされて「青いハーモニー」というタイトルになったが、そのできに対しマティスは不満だったため、最終的にはマティスが好きな赤色で塗りつぶして《赤いハーモニー》となった。