会田誠 / Makoto Aida
欧米美術をアイロニーを交えて表現する現代美術家
概要
生年月日 | 1965年10月4日生まれ |
国籍 | 日本 |
職業 | 現代美術家 |
芸術運動 | 昭和40年会 |
会田誠(1965年10月4日生まれ)は日本の現代美術家。新潟県で生まれ育ち、16歳のころから芸術家を志す。
社会・少女・戦争・サラリーマン・政治家・テロリストなどさまざまな主題を、具象・抽象・コンセプチュアル・インスタレーション、ビデオ・パフォーマンスなど多様なスタイルで表現する。
2012年に東京・森美術館で個展を開催。
日本における会田作品の一般的なイメージは女性に対する暴力的で、エログロ的な具象作品だろう。そのため、彼の暴力的な作品は日本社会でしばしば抗議されることがある。
村上隆と同じく日本の現代と前近代、また欧米文化と日本文化の境界線を曖昧にしたフラットな作風が特徴だが、欧米美術と自作品の同質性を主張する村上と異なり、会田は欧米美術に対して批判的な態度を示すことがある。
草間彌生、村上隆、奈良美智らと異なり国際的な活動履歴はほとんどなく、会田はおそらく日本国内での活動のみを基盤に日本の美術業界で名声を築いた現代美術家である。彼の名前がアート・ワールド内で取り上げられることは昔も今もない。むしろ、弟子的な存在で結成に携わったアート集団Chim↑Pomのほうが国際的に知られている。
会田のコンセプトは、スタイルは異なるがその低俗性とダークユーモア性の高さから、LAのロウブロウ・アートやストリート・アートなどのアンダーグラウンド・アーティストたちの姿勢に近いともいえる。また、会田は日本社会の体制順応的なブルジョアジーに対しても批判的な態度を示している。
略歴
初期
1989年に東京藝術大学美術学部絵画科油絵専攻卒業。1991年に東京藝術大学大学院美術研究科修了。
1993年より現代美術家として本格的に活動を開始。1994年には小沢剛、大岩オスカール、松陰浩之らと藝術集団「昭和40年会」を結成する。
同集団はメンバーたちによるグループ展やイベントなどは行われていたが、過去の芸術運動で見られるような共通の表現方法を推進するものではなく、会田と同年齢の美術家たちのゆるやかな集まりだった。メンバーチェンジを繰り返しながら同年生まれの作家5人程度で活動を継続している。
エログロ表現
本来は多様なスタイルと主題を扱う現代美術家だが、日本における会田作品の一般的なイメージは女性に対する暴力的で、エログロ的な具象作品だろう。
最も顕著なのは2001年の《ジューサーミキサー》で、この作品は笑みを浮かべる全裸の若い女性数千人が巨大ミキサーの中で液化されようとしている作品である。
会田によれば「《ジューサーミキサー》は14歳のころに浮かんだイメージ。本当のイメージとしては、ミキサーの中には人類の全女性、約18億人が入っている。思春期の傷つきやすいシャイな少年なら、実際に変態や残虐性はなくてもこのようなイメージを浮かべるものは多いだろう」と話している。
このエロティックでありグロテスクなイメージの不快な組み合わせは、日本のアンダーグラウンド漫画家である丸尾末広の影響があるという。アンダーグラウンド漫画雑誌『ガロ』は若いころの会田に強烈な影響を与え、そこに掲載された丸尾の暴力的で下品な作風は多大な影響を与えた。
また、丸尾末広とならんで『ガロ』で有名なアンダーグランド漫画家である根本敬の2017年に開催された絵画プロジェクト「根本敬ゲルニカ計画」にアドバイザーとして参加している。
そのため、彼の暴力的な作品は日本社会でしばしば抗議されることがある。2012年に森美術館で開催した個展「会田誠展:天才でごめんなさい」では、女性差別、児童虐待、暴力を肯定する表現であると見なされ「ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)」から性的描写の理由で抗議を受けた。
また、2018年には京都造形芸術大で会田の公開講座を受けた女性から、性的・暴力的表現を強制的に見せられたとして提訴されている。
欧米現代美術への強い批判精神
欧米美術と日本美術の境界線を曖昧にする作家は多数いるが、『ミュータント花子』で見られる表現のように、会田は西洋美術、特にアメリカ現代美術やコンセプチュアル・アートに対して強い批判精神を持ち、皮肉やジョークを含ませた作品が多い。
1997年の会田の芸術漫画作品『ミュータント花子』で最も顕著に表れている。主人公の花子は、広島の原爆の影響によって突然変異的なスーパーパワーを得た小学6年生の少女だが、第二次世界大戦の太平洋において史実とは逆に連合国軍(特にアメリカ)を打ち負かしてしまう。会田は漫画でアメリカを挑発的に扱う。
アメリカに対して最も挑発的な作品は1996年の《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》である。炎に包まれたマンハッタンとその火の上を無限大の記号形作りながら旋回する日本の戦闘機・零戦が描かれている。
会田は本作品について「多くの日本人の心の奥深くに潜んでいると思われる願望を誇張し、自嘲的に戯画化して表現したものである」と話している。
日本の中産階級への批判
ファイン・アート様式ながらも会田のコンセプトは低俗でユーモア性が高い。それはLAのロウブロウ・アートやストリート・アートなどのアンダーグラウンド・アーティストたちと近く。会田は日本社会の体制順応的なブルジョアジーに対しても批判的な態度を示している。
LAのロウブロウ・アーティストがNYのハイアートに反発し、LAで独自の芸術コミュニティを作り上げたように、会田もまた欧米のハイアートに反発し、同時に日本の順応的なブルジョア階級に批判し、日本で独自の現代美術コミュニティを作り上げようとしている。
■参考文献
・『会田誠 MONUMENT FOR NOTHING」グラフィック社
・https://www.artlogue.org/node/4174、2019年9月10日アクセス
※本ページは英語・中国語など無断翻訳転載可能。