【美術解説】耽美主義「美学や表層的な美に価値観を置く芸術」

耽美主義 / Aestheticism

美学や表層的な美に価値観を置く芸術


オーブリー・ビアズリー「サロメ」(1893年)
オーブリー・ビアズリー「サロメ」(1893年)

概要


耽美主義(または唯美主義)は、社会や政治を主題にすることを重要視する美術よりも、「美とは何か」「どのようなものが美しいのか」といった美学の方に価値観を置く芸術運動である。また、作品内に深い意味や意図を含ませたり解釈することより、もっと表層的な美に価値観を置く。

 

耽美主義運動は19世紀のヨーロッパで発生し、オスカー・ワイルドやオーブリー・ビアズリーらに支持された。フランスでは象徴主義やデカダンスなどが代表的な耽美主義的傾向のある芸術運動で、ほかにイタリアやイギリスや日本などでも同様の傾向の芸術運動が存在している。

 

ムーブメント終了後も、たとえば社会的・政治的主張を文学に投影することに反対してきたハロルド・ブルームをはじめ、過去1世紀にわたって人文学の分野において、耽美主義は重要視されている。

 

なお、ファインアートにおいて明確な耽美主義グループは存在していない。雰囲気的なものと思えばよいだろう。

ファインアートと耽美主義


耽美主義と密接な関わりのある画家の多くはイギリスのラファエル前派の画家が中心である。シメオン・ソロモン、ジェームズ・ホイッスラー、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、エドワード・バーン=ジョーンズ、ジョン・エヴァレット・ミレイが挙げられる。

 

また、当時、耽美主義運動を積極的に支援した画廊はロンドンのグロスヴナー・ギャラリーである。

おもな耽美系作家