【美術解説】写実主義「現実を率直に正確に描き出す美術様式」

写実主義 / Realism

現実を率直に正確に描き出す美術様式


《出会い こんにちはクールベさん》1854年
《出会い こんにちはクールベさん》1854年

概要


「写実主義」は、一般的に主題とする対象を率直に描く表現スタイルである。写実主義作品はさまざまな時代の芸術で見られるもので、多くは高い描写技術と訓練、芸術様式の回避が見られる。写実主義は自然主義と呼ばれることもある。

 

一般的に視覚芸術において、魅力的な写実主義絵画とは、対象の形態、遠近法、具象性、光、色などを緻密な描写力で描いた作品であるが、近代美術における写実主義または自然主義とは、同時代における世俗的、卑しい、卑劣な現実を強調的に描写する作品のことを指す。それまでの神話や聖書、過去や未来を主題とした幻想的写実主義と区別される。

 

写実主義の代表的な画家は、現実の女性の裸体を描いたギュスターブ・クールベ、ブルジョア階級や貴族から卑しく見られていた農民の貧しい生活を描いたジャン=フランソワ・ミレー田舎の風景を描いたカミーユ・コローなどが挙げられる。

 

1848年革命以後、1850年代のフランスで発生した写実主義運動が典型的なもので、18世紀後半にフランス文学や美術の主流派となったロマン主義を否定する形が現れた。