【作品解説】レオナルド・ダ・ヴィンチ「キリストの洗礼」

キリストの洗礼 / The Baptism of Christ

レオナルドとヴェロッキオの共作


《キリストの洗礼》1470-1475年
《キリストの洗礼》1470-1475年
作者 レオナルド・ダ・ヴィンチ、アンドレア・デル・ヴェロッキオ
制作年 1470-1475年
サイズ 152.0 cm × 180.0 cm
メディウム パネルにテンペラと油彩
所蔵者 ウフィツィ美術館

《キリストの洗礼》はレオナルド・ダ・ヴィンチによる油彩作品。ウフィツィ美術館が所蔵している。

 

イタリアのルネッサンス期に画家アンドレア・デル・ヴェロッキオのアトリエで1472年から1475年頃に制作した絵画で、一般的にはヴェロッキオとの共同作品とみなされている。美術史家の中には、ヴェロッキオの工房のほかにメンバーの手も加えられていると指摘するものもいる。

 

この作品は、マタイ、マルコ、ルカの福音書に記録されているように、洗礼者ヨハネによるイエスの洗礼を描いている。新約聖書に書かれているヨルダン川で隠遁生活を送っていた聖人ヨハネの元へイエスキリストが来訪し洗礼を受ける場面である。

 

左側に描かれている天使たちは、若き日のレオナルドによって描かれたと記録されているがが、現代の批評家たちは背景の風景の大半もレオナルドによるものだと見解を示している。

 

首を捻る難しいポーズや衣装表現の巧みさ、奥行きを感じさせる風景は、若きレオナルドの野心を表してありあまる。背景の風景の多くは天使のように油彩で描き、残りの部分はテンペラで描いた可能性が高い。 

ヴェロッキオの作品でもある


絵全体の構図はヴェロッキオの作品であり、その重要性と価値が見落とされがちである。

 

アンドレア・デル・ヴェロッキオは、15世紀後半にフィレンツェで成功した工房を経営していた彫刻家、金細工師、画家である。彼の弟子にはボッティチェリ、ボッティーニ、ロレンツォ・ディ・クレディ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどの画家がいた。

 

ヴェロッキオは画家ではなかったが、彼の手によるものはほとんどなく、彼の名声は彫刻作品を中心としたものであった。ヴァロッキオは多作の画家ではなかったため、彼の手による絵画はほとんどなく、彼の職人としての名声はおもに彫刻作品が中心である。本作はヴェロッキオがレオナルドの才能に舌をまき、筆をおったという伝説をも生んだ、歴史的作品。

歴史


イタリアではパレードの盾のような耐久性のあるものにしか使われていなかった技法が、オランダやフランドルの画家や輸入品によってフィレンツェに伝わっきたころに、この絵が描かれた。

 

アントニオ・ビリによれば、《キリストの洗礼》はS.サルヴィ教会の依頼を受け、後にサンタ・ヴェルディアーナのヴァロンブロッサン・シスターフッドに譲渡された。 1810年にアカデミアのコレクションに入り、1959年にウフィツィ美術館に移管された。16世紀にはジョルジョ・ヴァザーリの《画家たちの生涯》で、ヴェロッキオとレオナルド・ダ・ヴィンチの伝記として論じられている。