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【美術解説】ユーリ・ノルシュテイン「ロシア短編アニメーションの巨匠」

ユーリ・ノルシュテイン / Yuriy Norshteyn

ロシア・アニメーションの第一人者


「霧の中のハリネズミ」
「霧の中のハリネズミ」

概要


生年月日 1941年9月15日
国籍 ロシア
表現媒体 アニメーション
公式サイト http://www.comicbox.co.jp/norshtein/

ユーリ・ボリソヴィチ・ノルシュテイン(1941年9月15日生まれ)は、『霧の中のはりねずみ』や『話の話』などの短編アニメーション作品で知られるソ連・ロシアのアニメーション作家の巨匠である。

 

1981年から、ニコライ·ゴーゴリの短編小説『外套』をベースにした、同タイトルの本編アニメーション作品『外套』を制作しているが、30年以上経ってもまだ完成しておらず、アニメーション史上最長期間のプロジェクトとなっている。


略歴


「霧に包まれたハリネズミ」でヒット


ユーリ・ノルシュテインは、第二次世界大戦戦時下に、母の疎開先のペンザ州ゴロヴィンシチェンスキー地区アンドレエフカ村で、ユダヤ家庭のもと生まれ、モスクワで育った。父の職業は、木材加工工場の機械の整備工で、母は幼稚園の保母。

 

美術学校を卒業したあと、はじめは家具職人をしていたが、1959年にアニメスタジオ「ソユーズムリトフィルム」付属のアニメーターコースに入学する。卒業後の1961年にそのままアニメスタジオで働くことになる。彼がアニメーターとして最初に関わった映画は『Who Said "Meow"』(1962年)だった。

 

アニメーターとして50本ほどの映画に関わったあと、ノルシュテイン自身が監督を務める機会を得て、1968年に『25日・最初の日』でデビューを果たした。次の作品は彼の出世作となる『ケルジェネツの戦い』で、ロシアのアニメ作家イワン・イワノフ=ワノとの共同監督作品だった。

 

1970年代を通じて、ノルシュテインは『あおさぎと鶴」(1974年)、『霧につつまれたハリネズミ』(1975年)、『話の話』(1979年)などの彼の代表作ともいうべき傑作を次々と発表する。また切り絵アニメーションの手法を用いて作り出された作品は、世界中で高く評価された。

 

1993年4月、ノルシュテインと3人のほかのアニメーターは、ロシアにアニメーション学校とスタジオを設立。ロシア映画委員会はスタジオの株主の1人である。2005年、ノルシュテインは『Snow on the Grass』 『Fragments of a Book』『アート・アニメーション講義』を出版。同年、川本喜八郎の人形アニメ『死者の書』のゲストアニメーターとして招待される。

 

2008年10月10日、『Snow on the Grass』の完全版を出版。2005年版は248ページだが完全版は620ページとなり、1700のカラーイラストレーションが含まれている。書籍制作のため、『外套』の制作は1年半はど中断されることになった。

未完の大作「外套」の進行状況


1980年からゴーゴリの短編小説『外套』の制作が始めるものの、ソビエト連邦の崩壊による社会的混乱や政治変動といった背景もあり、何度か制作が中断され、30年以上経った今も未完の状態となっている。現時点では30分ほどの長さの作品が完成しており、毎年少しずつ新しいシーンを追加しており、作品を完成させる意思はあるようだ

 

 

現在もまだノルシュテインは『外套』の制作を続けている。この映画プロジェクトは数多くの財政トラブルや誤った発進を経験したが、現在はいくつかのロシア国内外のスポンサーから信頼できる資金提供を受けており、少なくとも25分は完成しており、2本の低解像度のクリップが公開されている。映画の最初の20分はロシア美術館におけるノルシュテインのさまざまな展示内で上映されている。なお、全体として65分になる予定だ。

作品リスト


  • 1968年 - 『25日・最初の日』
  • 1971年 - 『ケルジェネツの戦い』
  • 1973年 - 『狐と兎 』
  • 1974年 - 『あおさぎと鶴』
  • 1975年 - 『霧につつまれたハリネズミ』
  • 1979年 - 『話の話』
  • 1995年 - 『ロシア砂糖のTVコマーシャル』
  • 1999年 - 『おやすみなさいこどもたち』
  • 2003年 - 『冬の日』(アニメーション作家35名による合作)
  • 製作中 - 『外套』