【美術解説】ウジェーヌ・グラッセ「アールヌーヴォーの先駆け」

ウジェーヌ・グラッセ / Eugène Grasset

東洋芸術から「生」を発見したポスター画家


概要


ウジェーヌ・グラッセ(1845年5月25日-1917年10月23日)はスイス人装飾芸術家。ベル・エポック時代にフランスのパリでブックデザインやポスターデザインで活躍し、アール・ヌーヴォーの先駆けと見なされている。


父親は飾り棚のデザイナー、製作者、彫刻家だったので、幼少時から芸術的環境で育つ。フランソワーズ・ボシオンのもとでドローイングを学び、1861年には建築の勉強をするためにチューリッヒへ移動。卒業後、エジプトを訪れ、そこで膨大な数のポスターデザインを見る。このエジプト旅行の体験がのちに、グラッセの創作源泉となった。


1871年にパリへ移動して家具、タペストリー、陶器、宝石のデザインの仕事を行いキャリアを積み始める。象牙や金といった高価な素材を絶妙に組み合わせて作ったもの。また日本の浮世絵の平面的表現や東洋の職人たちがよくモチーフとして使う動植物にも関心を示し、研究をしはじめる。


こうして生まれてのが「植物とその装飾への応用」というグラッセの芸術思想であり、これはアール・ヌーヴォーの様式とパターンの基礎を築いたと考えられている。グラッセの装飾に対する理念は「生の喜びを表す1つの方法」で、そのため形は、自然から引き出されるものを重視した。動物や植物などの自然を見つめることから、装飾芸術は誕生したという。


1877年にグラッセは、グラフィック・デザインに転向して、絵葉書や切手など金になる作品を積極的に手がけるようになる。最もよく売れたのはポスターアートで、ポスター画家として一般的に認知されるようになる。

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