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【作品解説】シュルレアリスム時代の世界観

シュルレアリスム時代の世界観 / Le monde au temps des surréalistes

欧米中心の世界観に反発した世界地図


『Le monde au temps des surréalistes』(1929年)
『Le monde au temps des surréalistes』(1929年)

概要


『Le monde au temps des surréalistes(シュルレアリスム時代の世界観)』は、1929年にパリのシュルレアリストが作成した世界地図。1929年6月にベルギーで刊行された定期刊行物『Variétés』の特別号に掲載されたものである。

 

本来の世界地図と異なり、意図的に地図を歪めており、20世紀初頭の帝国主義やヨーロッパ中心主義の従来の世界観に対する反発する政治的メッセージを多分に含む世界地図となっている。

 

反植民地主義を謳ったシュルレアリスムの地図は、植民地勢力を排除して、西洋の影響を受けていない文化や共産主義者が支配する世界を作り出している。

 

実際、ブリュッセルやパリのシュルレアリストたちが政治的・社会的関心に目を向けているのは、この地図が(ソビエト)ロシアを明確に認識していること、また、ヨーロッパ、日本、アメリカといった植民地主義を進める大国が事実上、地図から排除されていることの両方に表れている。

 

最初に北極点の輪郭を描いており、地球の海を横切る赤道を中心に、領土が縮んだり膨らんだりしている。大西洋を中心とした地図の予想を覆し、太平洋の島々を中心とした時間と空間がぶつかりあっている。また、ロシアやアラスカ、グリーンランド、ラブラドル半島などの寒冷地が誇張されている。

 

ニコバル諸島、マルケサス諸島、ペルー、メキシコ、アラスカなどの島々などは、パリのシュルレアリストたちが、特にインスピレーションの源泉にしていた地域としられている。このファンタジーに混じって、反帝国主義が芽生えていた。

 

ユートピア的なビジョンであると同時に、彼ら自身のアジェンダの推進でもあり、彼らが影響を受けたものへのオマージュでもある。

 

 

フランスはパリの街だけになり、イギリスはアイルランドしかない状態になっている。日本とアメリカは跡形もなく、アラスカ州やハワイ州やカリフォルニア州が残っている。

 

ロシアが特に巨大化しているのは、当時のロシア革命の重要性を示唆していると思われる。また、アラスカが巨大なのは、アラスカはかつてロシアの支配下(1867年にアメリカがロシアから買収)だっただめである。

 

 

また、アフリカ、中国、オーストラリア、南アメリカは、地図上では比較的小さい規模だが、シュルレアリストのプロジェクトの中では、存在感を増しはじめている。


■参考文献

・「国境を越えたシュルレアリスム」展図録

https://www.khanacademy.org/humanities/art-1010/dada-and-surrealism/xdc974a79:surrealism/a/surrealism-an-introduction、2021年12月14日アクセス