【作品解説】ハンス・ベルメール「人形」

ハンス・ベルメール「人形」

セカンドドールの演劇人形写真集


「The Doll」(1936年)
「The Doll」(1936年)

概要


腹の部分が球体形になっており上下に骨盤を付けることができるのがセカンド・ドールの特徴である。
腹の部分が球体形になっており上下に骨盤を付けることができるのがセカンド・ドールの特徴である。

「人形(La Poupée,)」は、1936年に手足の取り外しが可能な等身大の球体関節人形のモノクロ写真に彩色をほどこしてフランスで出版された作品です。

 

上の写真は、その「人形(La Poupée)」シリーズの1枚で、1936年に腕や足のないセカンド・ドールを木に吊り下げて撮影されたものです。

 

「人形(La Poupée,)」は、写真集というよりも活人画にあたります。活人画とは衣装を身につけた役者がポーズをとって、演劇や絵画のような情景を作る表現のことです。

 

ベルメールは、ジャック・オッフェンバック(1819-1880)のオペラ『ホフマン物語』に影響を受けており、人形を使って『ホフマン物語』を表現したかったとうです。そのオペラの内容は、主人公は等身大の機械人形に恋をする話であした。

 

ベルメールのファースト・ドールは、木材、石膏、金属棒、ナット、ボルトを材料として少女を表現したもので、その不穏な空気のする人形は、破壊性、エロティック、サディスティック、フェティッシュなどシュルレアリスム的な要素を多数含んだものでした。

 

セカンド・ドールは腹部が球体関節であることがファーストとの大きなちがいで、彼女の胴体は、球体型のお腹の接続部品の上と下の両方に骨盤に相当するパーツが接続できるようになっています。この写真の人形はセカンド・ドールで、人形には手足がなく、顔が部分的に隠されていますが、これは形の胸や性器を強調するためであるといいます。また拷問や虐待をも感じさせるが、それら全体から漂うそのサディズム行為を演劇的表現をもって鑑賞者に訴えかけるのが目的でした。

 

なお、ベルメールは、1934年にドイツ題「人形(Die Puppe)」というタイトル で、さまざまな人形にポーズを取らせたテキスト付きの写真集を自費出版していますが、これは「人形(La Poupée,)」と少し異なります。1934年版はファーストドールの写真集です。

 

「人形(La Poupée,)」は、1935年の秋にセカンド・ドールを制作して前回と異なる場所(おもに屋外)でそれらを撮影し、1936年にフランス語版「La Poupée,」として出版したものです。

 

日本語:人形

英語:The Doll

ドイツ語:Die Puppe

フランス語:La Poupée,

 

となる。