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【NFT詐欺】NFTは登記情報のようなもの

NFTは登記情報のようなもの

田舎の廃墟の権利書のやり取りで熱狂する奇妙な人たち


NFTブームから一年


NFTブームから1年、NFTは芸術を変えたか? ほとんど変わってません。

 

1425年頃、フィレンツェの画家マサッチョが、初めて一点透視図法の大作を描いた。これが、その後の芸術家のあり方に大きな変革をもたらした。

 

1839年、パリでルイ・ジャック・マンデ・ダゲールは、新しい写真の発明を披露した。この発明は視覚表現の本質を変え、それ以来、美術館の壁は同じではなくなった。

 

今からちょうど1年前の2021年3月11日、ビープルことマイク・ウィンケルマンは、コンピュータで描いたイラストのコラージュを、NFTという電子証明書が付いているというだけで、6900万ドルで取引された。

 

その高額から、イラストレーター、ミュージシャン、写真家、そしてベテランのアヴァンギャルドまで、あらゆるクリエイターがNFTのゴールドラッシュに参加しようと躍起になった。

 

NFTは、通常はデジタル創作物を認証するために発行されるっものだが、これまでの絵画や彫刻のようなアナログ的な対象物に対しても発行されるようになり、それ以来12カ月間に約440億ドルがやり取りされた。

NFTは登記済みの家のようなもの


ところで、この「NFTアート」の大津波は、アートの姿や意味、あるいは深い意味でのアートとは何かについて、実際に何らかの大転換を引き起こしたのだろうか。

 

いや、そんなことはほとんどありえないかもしれない。それは、「NFTアート」が存在しないからである。なぜなら、NFT(non-fungibleトークン)とは、所有権と真正性の証明書であり、「美学」や「美術」ではないためである。

 

NFTを「家の権利証」「登記情報」だと置き換えて考えてみよう「登記された家」と「登記されていない家」とが異なるものであるかのように言うことはあまりいないでしょう。登記された家は、未登記の家より価値が高いのでしょうか? 

 

 

なんとなく、未登記より登記したほうが印象がよく見えるでしょう。登記のメリットは、自分が所有者であることを、他の第三者に主張すること。同じようにアートも「認証」のあるなしで、同じように良い作品にも悪い作品にも見えるかもしれない。

 

しかし、実際家の価値は「権利書」や「登記情報」で決まらない。「NFTアート(登記)」と「普通のアート(未登記)」の違いも同様である。

 

あらゆる種類のデジタルアートを収集する先駆者であるサンフランシスコ近代美術館のメディアアート・キュレーター、ルドルフ・フリーリング氏は述べている。「NFTのアート展を開くという考えは、私の考えでは、率直に言って馬鹿げている」という。

 

登記済みのただの平屋の家の内覧会で騒いでいるようなものである。

 

ロンドンのオークションハウス、サザビーズのスペシャリスト、マイケル・ブハンナは、NFTの目新しさが失われるのもそう遠くないうちに、人々は「デジタルアート」の内容について話すことはあるが、NFTは所有権移転の際の細かなこととしてみなすだろう。

 

家に関していえば、土地や建物の価値を話す人は多いが、登記情報に関して必至にしゃべる人はいないことと同じである。NFTで大騒ぎしている人は、登記情報に必至に騒いでるだけである。

NFTアートの始まりは美学ではなくお金の問題


そもそも、NFTアートが誕生した理由は、美学よりもお金が根本にあった。2014年、ベテランのデジタルアーティストであるケヴィン・マッコイは、アニル・ダッシュという技術者とともに、最初のNFTと広く見られているものをつくった。(まだ、そのような名前はなかったが)。

 

マッコイの説明によれば、2014年当時、彼は自分や友人たちが作ってほとんど売れなかったデジタル作品の著作権を主張し、所有権を譲渡する方法を探していた。結局のところ、デジタルファイルは、ビデオであれ、Beepleが作ったようなJPEGであれ、無限に、そして完璧にコピーすることができたからだ。

 

必要なのは「本物」にすることだった。マッコイは、ブロックチェーンが一種の仮想金庫として機能することに気がついた。デジタルアート作品の権利書をNFTとして保管すれば、コレクターは突然、所有・取引可能な固定物を手に入れることができた。

 

しかし、NFTはほとんどのアーティストにとって、「美学」はもちろん「お金」に関してもそれほど大きな意味はない。

美学どころかお金も稼げてない実情


分析会社チェイナリシスの経済学者イーサン・マクマホンの計算によれば、販売されたNFTの約半分は400ドル以下であり、クリエイターがNFTを鋳造する際のブロックチェーンのコストはもちろん、デジタルスタジオを維持するコストも稼げない判明した。

 

これは、デジタルスタジオの維持費はおろか、クリエイターがNFTを鋳造する際のブロックチェーン・コストを稼ぐにも十分ではない。そして、まったく売れないNFTの数は数え切れないほどであるという。

 

マクマホンはまた、NFTの転売は、本当に儲かるのは市場のトップエンドだけで、大半のNFTはほとんど転売されないという。

 

「NFTにまつわる熱狂的な誇大広告で利益を得ようとする人は、本当に気をつける必要がある」とマクマホンは警告する。「なぜなら、多くの場合、それはあなたにとって不利になるからである」。

 

あなたは、「登記済みの田舎の廃墟です! 本物です。買ってください!」と価値のない田舎の古民家の権利書を売買に熱狂しているのは想像に難くない。


■参考文献

・https://www.nytimes.com/2022/03/03/arts/design/nft-art-beeple.html、2022年3月7日アクセス

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