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【作品解説】アンリ・マティス「ピンクのアトリエ」

ピンクのアトリエ / The Pink Studio

もう1つの「赤いアトリエ」


アンリ・マティス『ピンクのアトリエ』(1911年)
アンリ・マティス『ピンクのアトリエ』(1911年)

概要


作者 アンリ・マティス
制作年 1911年
サイズ 182 cm×221 cm
メディウム キャンバスに油彩
所蔵先 プーシキン美術館

「赤のアトリエ」の左側の部屋


『ピンクのアトリエ』は、1911年にアンリ・マティスによって制作された油彩作品であり、『赤のアトリエ』と同じく、マティスのスタジオを描いたものです。特徴的なピンク色の壁が印象的です。

 

床と壁に異なる強さのピンクカラーが使用され質感によって強烈な印象を鑑賞者に与えます。また、所々に緑と青が配置されることで、ピンクの豪華な輝きが強調されています。

 

これら2つの巨大な作品が、同じ環境で描かれたことは、『赤のアトリエ』の右3分の1が実際に『ピンクのアトリエ』の左3分の1と同じであることからわかります。マティスが、実際の作業環境について、このように対照的でありながらも同等に強烈な2つの絵画を制作したことは驚くべきことです。

 

アンリ・マティス『赤のアトリエ』
アンリ・マティス『赤のアトリエ』

ロシアのコレクターからの影響


マティスがこの作品を制作した環境には、ロシアのコレクター、セルゲイ・シチューキンの影響が強く見られます。

 

なお、「ピンクのアトリエ」はロシアのコレクター、セルゲイ・シチューキンの依頼で制作された作品です。彼は、マティスを自分の家に招待し、マティスは、シチューキンのピンクのリビングルームと呼ばれる一室に全ての絵画を集めていることに驚きました。ピンクのリビングルームには、ドガやセザンヌの絵も飾られていたそうです。

 

シチューキンのピンクのリビングルームが作品制作のインスピレーションになったことは明らかであり、『ピンクのアトリエ』は、その美しいピンクカラーと豪華な輝きによって、芸術史上の重要な作品として高く評価されています。

 

『ピンクのアトリエ』の類似作品には、エルミタージュ美術館所蔵の『画家の家族』、ニューヨーク近代美術館所蔵の『赤のスタジオ』、フランス・グルノーブル美術館所蔵の『茄子のある静物』があります。これらの絵画の共通点は、装飾性を重視し、東洋文化の影響を強く受けていることです。なお、『ピンクのアトリエ』は現在、ロシア・モスクワのプーシキン美術館に所蔵されています。

現代美術への影響


『ピンクのアトリエ』は、マティスの芸術的視点や装飾的なスタイルが現れた重要な作品の1つであり、芸術史上においても高く評価されています。また、このマティスの室内画の作品スタイルが日本の現代美術家、長井朋子に影響を与えたことも注目に値します。マティスのスタジオの豪華な雰囲気や色彩的な豊かさ、そして装飾的なスタイルが、彼女の作品に反映されている可能性があります。


■参考文献

https://www.thehistoryofart.org/henri-matisse/pink-studio/、2023年4月25日アクセス