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【作品解説】フィンセント・ファン・ゴッホ「木の根」

木の根 / Tree Roots

人生の苦悩を表現したゴッホの最後の作品


フィンセント・ファン・ゴッホ《木の根》,1890年
フィンセント・ファン・ゴッホ《木の根》,1890年

概要


作者 フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年 1890年7月
メディウム キャンバスに油彩
サイズ 50.0 cm × 100.0 cm
所蔵者 アムステルダム・ファン・ゴッホ美術館

《木の根》は、1890年7月にフランスのオーヴェル=シュル=オワーズでフィンセント・ファン・ゴッホが制作した油彩作品。

 

この絵は、ゴッホの最後の風景画で使われた2枚の正方形キャンバス(50cm)をつなげて構成された作品である。

 

ゴッホは、1890年5月にサン・レミーの病院を退院した後、パリの北にあるオーヴェル・シュル・オワーズという小さな町で最後の数ヶ月を過ごした。

 

この絵は、1890年7月下旬に亡くなる前の最後の絵という説もある。

 

ヤン・ハルスカーは、ゴッホの二枚の正方形キャンバス作品の中で最も独創的な作品だと批評している。鑑賞者は、木の根や幹を識別できると思っているが、被写体全体を識別することは困難である。

 

ヴァン・デル・ヴィーンとナップは、この作品について、《二人の人物のいる下草》と同様に、主題ではなく絵画自体が自立しており、抽象絵画やドイツ表現主義など後に続く前衛美術の先駆的な作品であるいると評している。

 

ハーグに滞在していた1882年、ゴッホは木の根の習作《木の習作》を制作しており、《悲しみ》の拡大版と同時期に完成させていた。

 

ゴッホは弟のテオに宛てた手紙の中で、これらの絵では、人生の苦悩のようなものを表現したかったと述べている。

 

2020年、ゴッホ研究所とゴッホ美術館の研究者は、歴史的な絵葉書をもとに、この絵が制作された可能性の高い場所をオーヴェル・シュル・オワーズのドービニー通りであると断定した。

 

その場所は、当時ゴッホのホテルだったオーベルジュ・ラヴーから約150メートルのところにある。


■参考文献

https://en.wikipedia.org/wiki/Tree_Roots、2023年1月1日アクセス