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【作品解説】サルバドール・ダリ「十字架の聖ヨハネのキリスト」

十字架の聖ヨハネのキリスト / Christ of Saint John of the Cross 

三角形と円で構成されたイエス・キリスト


概要


作者 サルバドール・ダリ
制作年 1951年
メディウム カンヴァスに油彩
サイズ 205 cm × 116 cm
コレクション ケルビングローブ美術館・博物館

《十字架の聖ヨハネのキリスト》は、1951年にサルバドール・ダリによって制作された油彩作品。船や漁師がいる湖の上空を十字架に磔にされ浮遊しているイエス・キリストを表現したものである。

 

絵画における磔の表現は、通常、手を釘で打ち付けられ、血を流し、イバラの冠をかぶっているものだが、ダリの絵ではそれらの要素がなくなっている。

 

また通常、キリストの磔の構図は下から見上げるものだが、この絵は上から見下ろす構図となっている。この見下ろし型の構図は、16世紀のスペインのカトリック神秘主義者の十字架のヨハネが描いたドローイングにインスピレーションを得て制作している。

 

上から見下ろす形で描かれた構図は、キリストの腕の形と身体で形作られる逆三角形と頭部の円形で構成されており、三角形と円の組み合わせは三位一体を表現しているのだという。また頭部の円はプラトニックな思考を暗示し、「すべての事象は3で存在するのではなく、円を含めて4である」という意味で、統一性を表しているという。

 なおハリウッドのスタントマンをモデルにして描かれており、この作品でダリはキリストの身体をプラトニックな理想的な美として描きだそうと試みている。